時をかける少女

時をかける少女ノ画像



今が、11年だからもう5年の前の話になるが、ちょうど今の時期、夏頃だったと思う。

『時をかける少女をアニメ映画化!』と言うニュースを、かなり頻繁に見かけた時期があった。

普通、映画の告知なぞというモノは半年~1年以上前、下手すりゃそれ以上前からガンガンに露出させるモノであって公開されてからこんなに話題になると言う状況は珍しいというか、変わってるなと言う印象を受けたのを覚えている。

ただその時、告知云々よりも強く受けたのは「なんで“今”『時かけ』なんだか……」と言う印象だった。

私の知る限り、原作が世に出たのが当時で40年近く前。
実写で映像化されたのも知ってはいたが、それにしたって20年は前の話だった。
それほど原作の完成度が高く、複数回様々なメディアでのリメイクに耐えうる、
と言ってしまえばそれまでだが正直なところ「今更アニメで『時かけ』をリメイクする必要性が分からない」と言ういつもの偏屈な理屈を捏ねてちょうど8月くらいまで我関せずのスタンスで過ごしていたのだが、ある日珍しい情報が耳に入った。

アニメ版『時をかける少女』の試写会に“マスコミ関係者をほぼ呼んでない”と言うのである、「じゃあ誰を呼んだんだ?」と頭を捻った私が文明の利器ことインターネッツで検索をかけたところ、“ブログで映画評やってるブロガーをメインで呼んだ”と言う。

当時はまだTwitterが大流行する前で、フェイスブックなぞ知っているものの方が少ないという状況。
代わりに幅を利かせていたのがブログだった、だから決して素っ頓狂な事ではない。
ただし、“まともな映画のプロモーション活動でもない”のは明らかだった。

それでも「いくら何でも『悪評書くな』位の縛りはあったんだろう」と思っていたらそれもないという、その縛りがないのに私が巡ったブログでは悪評は見受けられなかった。

そこまでの情報が入ってきて、私は若干思案する。

元々の親会社は巨大資本である、そこが作った映画だからまぁプロモーションに金をかける事も難しくないはずだ。
だが“あえてそれをやらない”、それは作品に対する自信の表れなのか、
“ブログ”というその当時一番ナウなヤングエグゼクティブにバカウケなツールをプロモーションの媒体として使うという話題性を狙ったのか、へそ曲がりな私は上映館と上映時間までチェックしておいて踏ん切りがつかないでいた。

それから数日後のある日、私はいつものようにラジオを聞きながら扇風機で涼みつつ湯上がりにビールなど楽しんでいた。
そのラジオのパーソナリティーである声優さんは、私が考えるだに“この世界に存在するほぼ全てが気に入らない”ようで何かしらを褒めているのを聞いた事がない人なのだが、
その日の放送の開始から3~40分近く、アニメ版『時をかける少女』を“べた褒め”と言う表現を使うに相応しい状態だったのである。

それでようやく私は踏ん切りをつけた、「あの世の中に存在するモノ全て噛みつく人がアレだけ褒めるんだから少なくとも映画館まで行く価値はあるんだろう、もしつまらなければアイツの所為にすればいい」。

そう考えた私は翌日の昼の上映回で『時をかける少女』を観た。

私の感想をどうこう言うよりも、06年にアニメ版の『時をかける少女』がどれだけワッショイされたかを調べていただければ、それかリアルで体験された方はお分かりかも知れないが、少なくとも私はいい意味で“開いた口が塞がらなかった”。

性格上の問題もあるのだろうが、私は映画館まで足を運んで映画を観ておきながら“どこかしらアラを探す”と言う偏屈な人間である。
だがアニメ版の『時をかける少女』に関しては“アラが見つからない”どころか“褒めるところしか見つからなかった”のだ。
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アニメ版で制作するにあたってある程度アレンジが入っているとはいえ、原作の完成度とかアレンジにあたった監督とキャラクター造詣の実力とかそう言うレベルを越えたところの作品だったとしか言いようがない。

この言い方はなんだがそれまで何本も制作された『時をかける少女』の映像作品とは比べものにならないばかりか、ことによると比較自体が無意味なのかも知れなかった。

それ位、まるで後頭部を鈍器でぶん殴られたかのような衝撃を私は味わった。

見終わって、映画館を後にし、残暑の風が吹く空を見あげて、「俺の青春もあれくらい真っ直ぐで爽やかだったらね……」と一瞬自嘲した私は帰宅して早速ブログに記事をあげるべく家路についた。

そこで気付く。

「ああ、これを狙ってああいうプロモーションを展開したのか」、と。

偏屈でへそ曲がりな私すら、いつの間にかアニメ版『時をかける少女』にどっぷりつかっていた。

あれから5年、自宅では夏の『時かけ』DVD上映会が恒例行事である。

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